新しい真空脱水コンクリート工法
─理論と施工の実際

筆者の、20年間余の「新しい真空脱水工法」研究の集大成!
専門家たちが集結、執筆した専門書です。

編著者:畑中 重光
販売元:(株)工文社

体裁:B5判・総頁数=144頁
定価:2,200円(本体2,000円+税10%)+送料




編著者序より

 コンクリートの真空脱水工法とは、大気圧を利用し、打設直後のコンクリートを圧密し、同時に絞り出された自由水(ブリーディング水を含む余剰水)を吸引することで、コンクリートの水セメント比を低減し、緻密化し、強度を高める工法である。混ぜ物をするのとは異なり、コンクリートの緻密化、高強度化のために使用するのは施工時のエネルギー(ひと手間)だけということになる。ちなみ地球上の大気圧の大きさは、おおよそ0.1MPa=1013hPa=1013mbで、水柱にして10m、水銀柱にして76cmに相当する圧力である。仮に面積が1uであれば、質量にして約10t、すなわち軽自動車が10台乗っている勘定になる。これだけの圧力がちょっとした工夫で、しかも工事の現場で使えるのである。
 日本へは、高林利秋先生が中心になって我が国の「真空コンクリート工法」が発展してきたと理解している。当時の施工経験と旧ソ連の文献(中国語の翻訳版を和訳)に基づく知見が、「真空コンクリート工法」として昭和37年に理工図書鰍ゥら出版されている。本工法によってコンクリート面には、1uあたり6〜8tの大気圧が作用すること、コンクリートの初期強度が著しく増大するだけでなく、長期強度、摩耗抵抗性、凍害抵抗性などが増加して、硬化収縮量が減少するといった一般的な効果がすでに取りまとめて紹介されている。後述するが、高林先生と吉野理化工業鰍フ下で精力的に実践され、我が国の特に土木・道路分野で広まった本工法を、建築分野の軟練りコンクリートにまで本格的に適用しようという挑戦が平成4年ころから、実務者である村松昭夫氏と山口武志氏によって開始された(建設分野では、それ以前にも、たとえば大手建設会社技術研究所の山根昭氏、柿崎正義氏、和美広喜氏らによって一連の研究が行われている)。これが大きなきっかけとなって、コンクリートのフレッシュ性状と施工環境に応じた新しいステージの真空脱水工法へと発展してきたと考えることができよう。本書は、編著者がこの?年間余の間に、共同研究者の方々と共に明らかにしてきた「新しい真空脱水工法」に関する主な知見を中心に紹介したものである。


主な内容>

序/編著者 三重大学教授・畑中 重光
推薦の言葉/名古屋大学名誉教授・谷川 恭雄

1 章 真空脱水工法の概説
  1.1 従来工法とその改善
  1.2 新しい真空脱水工法の位置づけ
  1.3 床コンクリートの機能と要求性能
  1.4 真空脱水工法の適用例

2 章 真空脱水工法の研究
  2.1 コンクリート床スラブの表層および内部強度性状の改善
     (その1:スランプ,水セメント比,スラブ厚さ,処理開始時期の影響)
  2.2 コンクリート床スラブの表層および内部強度性状の改善
     (その2:真空脱水コンクリートの品質に及ぼす処理マットおよび真空度の影響)
  2.3 脱水開始時期の判定
  2.4 脱水効果に及ぼすスラブ筋の影響
  2.5 圧密現象に基づく脱水メカニズムの解明
  2.6 脱水時における内部空気泡の挙動
  2.7 間隙水圧分布の発生メカニズム
  2.8 フレッシュコンクリート中の自由水の挙動と透水・脱水
  2.9 塗り床材のふくれ防止効果
  2.10 表層に発生する微細ひび割れとその低減

3 章 真空脱水工法の施工
  3.1 用語の定義及び解説
  3.2 主な使用機材
  3.3 施工手順と留意事項
  3.4 品質管理と留意事項
  3.5 現場作業で真空度が所定値に上がらない場合の原因と対処方法
     (テクニカル・ワンポイント(7通))

付録
  付録1 技術開発と研究開発の経緯
  付録2 真空脱水工法の主な論文(執筆者ら)
  付録3 真空脱水工法の主な論文(執筆者ら以外)
  付録4 真空脱水工法の主なWeb情報

執筆者名および所属
  畑中 重光(三重大学 大学院工学研究科建築学専攻・教授)
  犬飼 利嗣(岐阜工業高等専門学校 建築学科・教授)
  坂本 英輔(広島工業大学 工学部建築工学科・助教)
  服部 宏己(岐阜市立女子短期大学 生活デザイン学科・教授)
  三島 直生(三重大学大学院工学研究科建築学専攻・准教授)
  山口 武志(竃セ光建商 大阪営業所・技術部長)
  湯浅  昇(日本大学 生産工学部建築工学科・教授)
  和藤  浩(三重大学 大学院工学研究科技術部・技術専門員)


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